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「いつから――?」
房一はいかにもそれがやり切れない、と云つた風に吐き出すやうに云つた。つゞけて、
「あれは何でせう、知吉さんといふ人は悪く云ふと娘をひつかけて相沢の家に入りこんだやうなもんでせう」
「さうですよ、ですが、何年ぶりでせう。これがもつと他の所だつたらおたがひ気がつかなかつたかもしれませんよ」
徳次は気が抜けたやうに、口のあたりをもごもごさせるきりだつた。
こんな風に「円い」――のだらうか。いや、それはどうでもよかつた。盛子はそこに房一を感じていた。それは房一の醜い他の部分を忘れさすに足るものだつた。
「をかしいから笑つたのだ」
「いつたい、今日は何ごとかの」
「しかしお松の生んだ子はほんとうに半之丞の子だったんですか?」
相手はしばらく黙つていた。だが、場所が高いのと、柵の中にいるためか、落ちついて答へた。
それがふしぎに思はれた。
彼は年に似合はず厚く生えた白髪まじりの頭を短か目に刈り上げ、多少猫背になりながら袴の両脇から手を差しこみ、心持肱を張つて坐つていた。それは何々翁肖像といふ掛軸を思はせるやうな古風な律義さと端正さを現はしていた。
「なに、消防演習?」